新しい事業の話になると、まず企画書をつくろうとしていませんか。
あるいは、生成AIに「新規事業のアイデアを10個出して」と頼んで、それらしい案が並んだものの、どれも自社の話に聞こえなかった。そんな経験はないでしょうか。
2026年10月2日、電通グループが、人とAIが一緒に事業のタネを探すための道具を提供し始めました。2040年に向けた社会の変化を181のテーマに整理し、それをAIに読み込ませて、人とAIが対話しながら可能性を探すというものです。
これは大企業向けのサービスです。ただ、中に入っている「考え方の順番」は、社員10人、30人の会社でも十分に使えます。今日は、目の前に御社の社長がいるつもりで、私ならこのニュースをどう読み、御社でどう使うかをお話しします。
簡単に説明する動画を作成しました!
目次
まず、このニュースを私はこう読みました

大企業の道具を、そのまま真似しなくていい
最初にお伝えしたいのは、御社がこの道具を契約する必要はない、ということです。
大企業には、新規事業の専門部署があり、半日の会議に何十人も集められます。中小企業ではそうはいきません。社長ご自身が営業も採用も資金繰りも見ている。その中で「未来を探す会議」に時間を割くのは、正直なところ簡単ではないはずです。
だからこそ、私は道具そのものよりも、その使い方の順番に注目しました。この順番だけ借りれば、御社の会議室と、いつも使っている生成AIで同じことができます。
注目したのは「AIに文章を書かせない」使い方
多くの会社で、生成AIの使い方は「下書きを書いて」で止まっています。議事録を整える、企画書の見出しを並べる、宣伝文句を三案出す。便利ですが、事業の中身は、頼んだ人の頭の外には出てきません。
電通がこの道具で示したのは、AIを文章係ではなく、企画書を書く前に一緒に考える相手として使う、という姿勢です。もともとは人がめくって読むカードだったものを、AIに読ませて対話する材料につくり直しています。
社長にとって大事なのは、ここです。AIに「答え」を書かせるのではなく、AIと一緒に「問い」を探す。この切り替えができると、生成AIは文書づくりの道具から、社長の考えを広げる相談相手に変わります。
181の未来テーマは、当たりくじではない
181と聞くと、「その中のどれが当たるのか」と考えたくなります。けれども、これは当たりくじではなく地図です。食、働き方、住まい、健康、学び、気候変動など、世の中の変化を広く並べて、自社と関係がありそうな道を見つけやすくしてくれるものです。
地図は、行き先を決めてくれません。行き先を決めるのは社長です。私なら、181すべてに目を通そうとはせず、御社の商売に近いものと、あえて遠いものを少しだけ選びます。その選び方は、次の章でお話しします。
中小企業の社長が、まず決めるべきこと

AIに渡す材料と、渡さない材料を線引きする
電通は、AIの出力は入れる情報によって大きく変わる、とはっきり書いています。ここは中小企業でもまったく同じです。
社内の思いつきだけをAIに渡すと、AIはそれらしい未来を次々に描いてくれます。この「それらしい」が危ないところです。もっともらしいけれど、根拠がない。会議が盛り上がるほど、その危うさに気づきにくくなります。
ですから、社長がまず決めるべきなのは、AIへの頼み方の上手さではありません。何を材料として渡し、何は渡さないか、という線引きです。売上の数字や顧客の声のように確かなものと、外から借りた未来の話。この二つを混ぜずに分けて渡す。この判断は、社員任せにせず社長が持っておくべきだと私は考えます。
御社の「事実」を、社長の言葉で言えるか
材料の中心になるのは、御社がいま持っている事実です。誰に、何を、どの地域で、いくらで届けているのか。
意外に思われるかもしれませんが、ここが一番時間のかかるところです。長く経営をされている社長ほど、自社のことは「わかっているつもり」になりがちです。改めて「うちのお客様は誰か」とAIに説明しようとすると、言葉に詰まることがあります。
私なら、会議の前日に、社長ご自身がAIに向かって自社の説明を話してみることをお勧めします。AIに「この説明でわかりにくいところを質問してください」と頼むと、社長が当たり前だと思っていた部分を突いてきます。それに答えていくうちに、御社の事実が言葉として整っていきます。
縛りは、最初に出しておく
もう一つ、最初に決めておきたいのが、御社の縛りです。動かせる人数、使える設備、守るべき法律やルール、そしてお客様と交わしてきた約束。
大企業の会議では、縛りを後回しにして自由に発想することもあります。けれども中小企業では、縛りを最後まで隠しておくと、アイデアが宙に浮いたまま終わってしまいます。「面白いけど、うちでは無理だね」で会議が終わる、あの残念な結末です。
縛りを最初にAIへ伝えておけば、出てくる案は、御社の手が届く範囲に自然と寄ってきます。
私なら、御社の会議でこう使います

社長と幹部2〜3人、2時間あれば十分
大企業は半日かけますが、中小企業なら社長と幹部2〜3人で2時間あれば十分です。机の上に、四つの材料を並べるつもりで進めます。
一つ目は、先ほど整えた御社の事実。二つ目は、御社に近い未来のテーマです。食品を扱っているなら食、工務店なら住まい、というように身近なところから選びます。三つ目は、一見関係のないテーマを一つだけ。たとえば食品の会社に「学び」や「気候変動」を足す。遠いテーマを一つ足すと、いつもの会議では出てこない問いが生まれます。四つ目は、先ほどの縛りです。
未来のテーマは、電通の道具がなくても、国や業界団体が出している将来予測の資料で代わりになります。大事なのは、出どころがはっきりしたものを選ぶことです。
AIへの問いは「うちの商品は、どの場面から消えるか」
AIへの問いかけは、シンプルで構いません。私がよく使うのは、こんな問いです。
「2040年の暮らしの中で、うちの商品はどの場面から消えるか」
「消えた場面の代わりに、残る場面はどこか」
「うちの技術で、別の暮らしの不便を減らせるところはないか」
一つ目の問いは、社長にとって少し耳の痛い問いかもしれません。けれども、自社の商品が消える場面を先に見ておくと、残る場面がはっきり見えてきます。AIには、答えを三つずつ、どのテーマを根拠にしたのかを添えて出してもらいます。根拠のテーマ名がついていると、あとで確かめやすくなります。
社長の仕事は、AIの答えに「違和感」を言うこと
AIが出した案を前にしたとき、社長がやるべきことは「採用するかどうか」を決めることではありません。「ここが引っかかる」という違和感を口にすることです。
「うちのお客様は、そういう買い方はしないな」
「その地域では、そもそも人が減っている」
こうした違和感は、現場を長く見てきた社長にしか言えません。そして、違和感が出たところこそ、次にAIへ渡す材料になります。社長の違和感をそのままAIに返し、「この点を踏まえて考え直してください」と頼む。このやりとりを何往復かするうちに、案が御社の現実に近づいていきます。AIが考える相手として力を発揮するのは、まさにこの往復の場面です。
未来の話を、今月の予定に落とす

2040年から、三段で戻ってくる
電通は、目指す未来の姿を先に置き、そこから逆算して今やることを考える方法を使うと説明しています。反対に、今年の延長で来年を描くやり方では、新しい事業が既存事業の小さな焼き直しになりがちです。
ただ、2040年の話のままでは、社長の明日の仕事にはつながりません。私なら、三段で戻ってきます。
まず、2040年に残したいお客様の一日を、一言で表します。次に、2030年にその一日が半分でも実現するための条件を三つ挙げます。最後に、その条件の一つを確かめる試みを、今年中に一つだけ決めます。この「一つだけ」がポイントです。中小企業は、同時にたくさんのことを試せません。だからこそ、一つに絞る判断を社長がする意味があります。
試すことは、お金をかけない小さなものでいい
試みといっても、大きな投資は必要ありません。
常連のお客様10人に、ちょっと話を聞いてみる。店の一角や展示会のブースの隅に、試しに置いてみる。付き合いのある取引先に声をかけて、一緒に試作してみる。
大企業なら社内の別部門と組むところを、中小企業は取引先や地域の仲間と組めます。これは小さな会社ならではの強みです。未来の話を、今月の予定表の中に入れる。ここまで来て初めて、AIとの会議が「ただの楽しい雑談」ではなく、経営の仕事になります。
外のやり方を一度のぞいてみるのも手
ちなみに電通は、11月11日に東京の本社ビルで、この道具の体験会を開くそうです。定員30名、参加無料、申し込みの締め切りは10月23日とのことです。
御社がこの道具を使うかどうかは別として、大企業がどんな順番で未来を考えているのかを一度見ておくのは、自社の会議の進め方を見直すきっかけになります。社長ご自身が無理なら、次の世代を担う幹部の方に行ってもらうのもよいと思います。
社内で企画にする前に、確かめておきたいこと

AIが描いたお客様は、まだ本物のお客様ではない
電通の体験会では、AIがつくり出した未来の生活者と会話する体験も用意されているそうです。具体的で、気持ちも伝わってきて、つい企画書の冒頭に載せたくなる姿だと思います。
けれども、それはお客様への聞き取りではありません。こちらが渡した材料と前提から、AIが組み立てた人物像です。前提がずれていれば、会話ももっともらしくずれていきます。
社長、ここは特に気をつけてください。AIが描いたお客様の声を、実在のお客様の声として社内や取引先に話してしまうと、判断を誤るだけでなく、信用も損ないます。
「事実」「読み取り」「仮説」を見分けて話す
私が支援先で必ずお願いしているのは、AIと一緒に出てきた内容を、三つに見分けてから社内に出すことです。
数字や自社のデータに裏づけがあるものは「事実」。未来のテーマから読み取ったものは「読み取り」。お客様の一日や新しい商品の場面は「仮説」。
この三つが混ざったまま話が進むと、仮説がいつの間にか事実のように扱われてしまいます。社長が幹部の報告を聞くときにも、「それは事実?それとも仮説?」と一言たずねるだけで、会議の質はぐっと上がります。これは電通の道具に限らず、生成AIで新しい事業を考えるすべての会議で使える習慣です。
やめた案も、やめた理由と一緒に残す
考える場は、残す仕組みがないと翌日には消えてしまいます。会議の最後の15分は、次の四つを共有のフォルダやチャットに残す時間にあててください。
続ける問い。やめた問いと、やめた理由。次に人が確かめること。そして、次にAIへ頼むときにさせないこと。
させないことの例としては、「ありもしない調査の数字をつくらせない」「競合他社の公表されていない計画を、事実として書かせない」「実在しないお客様の声を、本物として扱わない」などがあります。やめた案と理由が残っていれば、半年後に同じ議論を繰り返さずに済みます。
道具より先に、自社の材料を整える

大事なのは、三つの「分ける」
ここまでの話をまとめると、ポイントは三つの「分ける」です。
人とAIの役割を分ける。材料の出どころを分ける。そして、未来の話と今月の一手を分けたうえで、きちんとつなげる。
電通の道具は、この考え方を見せてくれる一つの例にすぎません。御社の材料のうち、何をAIに渡し、何は渡さないか。そこを先に決めた会社から、AIとの探索は本当の仕事になっていきます。
一人で抱え込まず、外の目を使う
最後に、社長にお伝えしたいことがあります。
自社の事実を言葉にする作業も、AIの答えに違和感を見つける作業も、社長お一人では意外と難しいものです。自分の会社のことは、近すぎて見えにくいからです。
もし「うちの場合はどこから手をつければいいのか」と迷われたら、まずは最初の2時間の会議を、外の人間を交えて一度やってみてください。御社の商売と縛りを踏まえたうえで、AIとどう向き合えばいいのか、一緒に考えるところからお手伝いできます。
DXやITの課題解決をサポートします! 以下の無料相談フォームから、疑問や課題をお聞かせください。40万点以上のITツールから、貴社にピッタリの解決策を見つけ出します。
このブログが少しでも御社の改善につながれば幸いです。
もしお役に立ちそうでしたら下のボタンをクリックしていただけると、 とても嬉しく今後の活力源となります。 今後とも応援よろしくお願いいたします!
IT・通信業ランキング![]() | にほんブログ村 |
もしよろしければ、メルマガ登録していただければ幸いです。
【メルマガ登録特典】AI戦略で10年以上勝ち続ける実践バイブル『AI競争勝者の法則』をプレゼント!
今すぐプレゼントを受け取る