社長、このニュースをご覧になって、「すごい話だけど、うちとは規模が違う」と感じられたのではないでしょうか。
2026年9月16日、肥満治療薬で知られるNovo(旧Novo Nordisk)が、AIの会社Anthropicと提携し、新薬の研究開発そのものにClaudeを使うと発表しました。CEOは「世界で最もAIを使いこなす医療企業になる」と言い切っています。
正直に申し上げます。この提携の規模やお金の桁は、御社が真似する話ではありません。ただ、発表の中身をよく読むと、中小企業の社長がそのまま持ち帰れる考え方が一つだけ入っています。それは「会社全体に一気にAIを配る」のではなく、「一番詰まっている工程を一つだけ選ぶ」という順番です。
今日はこの一点だけに絞って、御社ならどう考え、どう使うかを一緒に見ていきます。
簡単に説明する動画を作成しました!
目次
そもそも何が起きたのか、まず事実だけ整理します

決まったのは「AIに全部任せる」ではありません
発表の中身は、Claudeという道具をNovoの社員に配る、という話ではありません。Novoの研究者たちがすでに抱えている「ここが進まない」という課題を一緒に洗い出し、その工程専用の使い方を作り込む、という設計です。
最初の一歩も、いきなり全部ではなく、「効果が大きいと分かっている研究・開発の工程」から試すところに絞っています。あわせて、社内のシステム開発にも同じ会社のAIを使い、使い方の知見を社内で広げていく計画です。
すでにNovoは、Claudeを使って治験の報告書を作る時間を約9割減らした、と説明しています。今回の提携は、その先にある「どの候補を選ぶか」「実験結果をどう読むか」「次に何を試すか」という、もう一段判断に近い領域に踏み込む話です。金額は公開されていませんし、他のAI会社との取り組みも並行しています。一社に全部を預けているわけではありません。
「世界最速のAI企業になる」という言葉の中身
NovoのCEOは、研究開発の生産性を上げ、研究から製品までの時間を短くすると述べています。AnthropicのCEOは「100年分の医学の進歩を10年に圧縮できる」と表現しました。
社長にお伝えしたいのは、規模の大きさそのものではありません。この話が示しているのは、AI活用の重心が「資料を早く作る」から「判断を早くする」へ一段上がった、という事実です。実験のコストが大きく、失敗すると後戻りが長い創薬という仕事に、最先端のAIが入り込んだ。この一段上がった、という部分だけを、御社の話に持ち帰ってください。
これは大企業の話です。では、御社ならどう考えればいいのか

全社に配るのではなく、工程を一つ選ぶという発想
Novoが使っている研究用のAIは「Claude Science」という名前で、2026年6月に公開されました。たんぱく質や実験データなど専門分野の情報に幅広くつながり、60を超える専門データベースを扱えるとされていて、専門ごとに担当が分かれ、最後に内容を点検する役目まで用意されています。
ここで大事なのは仕組みの細かさではありません。「検索窓が賢くなった」のではなく、「隣の席に、一緒に考えてくれる担当者が一人増えた」という感覚だという点です。検索は、答えを探す行為です。隣の担当者は、次に何を試すべきかを一緒に考える相手です。
この違いが生まれる条件は、道具の名前ではありません。御社の担当者が、自分の仕事の「ここで止まっている」を一文で言えるかどうかです。言えないまま全社に配ると、賢い検索窓が増えるだけで終わります。
規制業界だからこそ、一気に広げなかった理由
創薬は、実験、臨床試験、届出の文書、製造という工程が長くつながっています。どこか一箇所だけ速くしても、次の関所が同じ速さのままなら、患者さんに届く時間は変わりません。Novoが最初に「効果が最も大きい工程」だけを選んだのは、この事情があるからです。
これは大企業ならではの、規制が厳しい業界の話です。ですが御社の業務も、注文を受けてから納品するまで、いくつもの工程がつながっているはずです。そこをそのまま真似して全社一斉に導入するのではなく、まずは工程をひとつだけ選ぶ、という順番だけを取り入れてください。
社長が決めるべきところは、まず「うちの詰まっている場所はどこか」です

見分け方は三つだけです
御社の中で、一番詰まっている工程を探すときの目印は三つです。
同じ資料を、何人かが何日も待たされている場所。ベテランの社員でないと判断できない場所。そこでやり直しが起きると、時間が長くかかる場所。
この三つが重なっている場所が、御社の中の詰まっている工程です。Novoの治験報告書が先に速くなったのも、科学の謎を解いたからではありません。待ち時間が長く、書き方の型がすでに決まっていた仕事だったからです。型が決まっている仕事ほど、AIという思考パートナーは力を発揮しやすくなります。
御社の業種に当てはめると
製造業なら、見積りを作る前の仕様確認や、過去のトラブル記録の照合。食品や卸なら、規格が変わったときの表示や検査の見直し。サービス業なら、契約書や見積書の内容確認、問い合わせへの一次対応。
業種は違っても、探し方は同じです。「全社でAIを使う」ではなく、「今いちばん止まっている、この一つの工程」を先に決めることです。
社長が決めるべきところは、あと三つあります

まず、最終判断を人に残すこと
Novoが使っている研究用のAIには、出てきた答えを人がそのまま信じない前提で、点検する役目がわざわざ用意されています。これは、AIの答えを鵜呑みにしない仕組みを、最初から仕込んでおくという意思表示です。
御社でも同じです。AIに任せるのは案の作成や下調べまでで、最後に「これでいく」と決める役目は、社長か、責任を持てる社員に残してください。
次に、AIに渡していいデータと渡してはいけないデータを決めること
Novoの発表でも、社外に出してはいけない実験データや患者さんの情報は、AIに渡さないという前提が明確に置かれています。
御社の場合も、顧客情報や取引先との契約内容、まだ公開していない見積り条件など、外に出してはいけない情報が必ずあります。AIを使い始める前に、渡していい情報と渡してはいけない情報を、紙に書いて分けておいてください。ここを後回しにすると、便利さが先に走って、後で取り返しがつかなくなります。
最後に、出す前に人が確認する場所を残すこと
弁護士が、AIが作った架空の内容をそのまま裁判所に出してしまい、罰金を科された、という出来事が世界で何度も起きています。これは業種を問わず起こりうる話です。御社でも、見積書やお客様への回答をAIに下書きさせるところまでは構いませんが、送る前に必ず人の目を通す場所を、あらかじめ決めておいてください。
相馬なら、御社にこう提案します

来期の予算会議で、聞くべき三つの質問
来期、AI活用の予算を検討するときに、真っ先に聞くべきなのは「どのAIが一番賢いか」ではありません。
いま社内で、一番待たされている仕事は何か。その仕事で、AIに渡していい情報と渡してはいけない情報は何か。出す前に人が確認する場所は、どこに置くか。この三つに答えられないまま始める導入は、見た目のデモを見ているだけの状態と変わりません。
まずは紙一枚から始めてください
NovoとAnthropicの発表は、最先端のAIが規模の大きい業界の中心業務にまで届いた、という合図です。ですが御社が持ち帰るべきなのは、「100年を10年に」という言葉そのものではありません。
詰まっている工程を一文で書くこと。人が確認する場所を残すこと。小さく試して、数字で測ること。これだけです。
今日、御社に戻られたら、まずは一つの工程だけを選んで、その工程の待ち時間と、確認する場所を紙に書いてみてください。そこから、御社に合ったAIの使い方を、一緒に組み立てていきましょう。
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このブログが少しでも御社の改善につながれば幸いです。
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