社長、御社には「これだけは外に出したくない」という情報はありませんか。お客様の名簿、図面、見積の根拠、契約書などです。
生成AIを試してみたいけれど、こうした情報を相手のサーバーに送るのは不安だ。そう言って、社内での利用を止めている会社を、私は支援の現場でよく見かけます。
2026年10月5日、米国の新しいAI企業が、自社の中に置いて動かせるタイプのAIを発表しました。これまでこの分野は、中国勢の存在感が大きかった領域です。
今回は、このニュースを中小企業の社長がどう受け止めればよいのかを、私ならこう分析する、こう使う、という目線でお話しします。先に結論を言うと、「今月すぐ飛びつく話ではありません。ただ、社長が先に決めておくべきことはあります」です。
簡単に説明する動画を作成しました!
目次
今回のニュースを、私ならこう読みます

「社内に置けるAI」が、米国からも出てきた
いま多くの会社が使っている生成AIは、質問を相手の会社のサーバーに送り、答えを返してもらう仕組みです。便利ですが、送った中身は一度、社外に出ることになります。
今回発表されたのは、AIの中身そのものを手元に持ち帰り、自社の中で動かせるタイプのAIです。これまで、このタイプで性能の高いものは中国の企業が多く出してきました。そこに、米国の大手半導体メーカーが出資する会社が名乗りを上げた、というのが今回の構図です。
私がまず注目したのは、性能の高さよりも「どこの国の、どこから来たAIなのかを説明しやすい選択肢が増えた」という点です。取引先から「そのAI、どこの製品ですか」と聞かれる業種の会社にとっては、これは小さくない変化です。
頭は大きいが、毎回使うのは一部だけ
このAIの頭の大きさは、約5010億という規模です。ただし質問のたびに全部を動かすわけではありません。実際に動くのは約230億だけです。
たとえるなら、5010億冊の蔵書がある図書館で、司書が質問ごとに必要な230億冊だけを棚から出してくる作りです。全部を毎回動かさないので、答えを出すときの計算が少なくて済みます。
一度に読める文章の長さもかなり長く、仕様書や議事録の束を切り分けずにまとめて読ませる使い方が想定されています。一方で、読めるのは文章だけです。写真や図面の画像は扱えません。図面を多く扱う製造業や建設業の社長は、ここを覚えておいてください。
まだ「発表」の段階で、誰でも使えるわけではない
ここは誤解されやすいところです。発表の時点では、まだ誰でも手に入れられる状態ではありません。最終の安全確認をしている最中で、AIの中身や説明資料は10月中に公開する予定、とされています。
商用でも使いやすい条件で公開される予定だと報じられていますが、正式な条件は公開時の文書を見るまで確定ではありません。
私なら、この段階では「ニュースとして知っておく」にとどめます。公開されてから、実際に動かした人の報告を待つ。順番としては、それで十分間に合います。
「安い」の中身を、社長の財布に置き換えて考える

安くなるのは、答えを出すときの計算
発表では、中国の同等クラスのAIと比べて、答えの質は同じくらいなのに、答えを出すときの計算量は3分の1から4分の1で済む、と説明されています。
AIの費用というと、作るときにお金がかかるイメージがあるかもしれません。ですが、使う側の請求書を動かすのは、毎回答えを出すときの計算のほうです。ここが減れば、同じ機械でさばける質問の数が増えます。
ただし、作る側の費用は別の話です。このAIは、AI用の高性能な計算機を数千枚から1万枚規模で何週間も回して作られています。「安い」というのは、あくまで「使う側が答えをもらうとき」の話だと押さえておいてください。
得意と不得意が、はっきり分かれている
発表した会社自身の資料にも、正直な但し書きがあります。長い文章を読んで考える力は高い評価ですが、プログラムを書いたり直したりする力では、中国の別のAIに大きく差をつけられています。
社長の会社に置き換えると、こうなります。社内規程や過去の提案書を読ませて「この条件に合う前例はあるか」と聞くような使い方なら、今回のAIの強みが活きる可能性があります。一方で、社内のシステムを直す作業をAIに任せたいのであれば、今回のAIが一番の候補とは言えません。
私なら、「何に使うか」を決めずに比較表だけを眺めることはしません。用途によって、選ぶべきAIが入れ替わるからです。
数字は「会社の自己申告」という前提で見る
ここで紹介した数字は、すべて発表した会社自身が出したものです。第三者が同じ条件で試して確かめる作業は、これからです。
さらに、いま一部の利用者が試している先行版と、10月に公開される正式版が同じものとは限りません。安全確認のあとで、ふるまいが変わることもあります。
担当者や取引先のIT会社が比較資料を作ってきたら、私なら「これは会社の発表か」「第三者が確かめたか」「文章だけか、画像も扱えるか」「得意な作業は何か」の4点を、資料のいちばん上に書いてもらいます。それだけで、数字の読み違いがずいぶん減ります。
これは大企業や国の話。御社はそのまま真似しなくていい

大企業や国が進めているのは「自前のAI工場」
発表した会社は、企業や国に向けて、自分たちのデータで調整したAIを国内に置く「AI工場」という構想を掲げています。実際に、韓国の大手小売グループと、国内に計算の拠点を置く話を進めています。
これは、国や巨大グループが「自分たちのデータを、他国のサーバーに預けない」ための動きです。データを自分たちの管理下に置くという考え方で、大企業の世界ではここ数年の大きな流れになっています。
ただ、これは資金も人材もある組織の話です。中小企業である御社が、この形をそのまま真似する必要はありません。
中小企業が自前で置くと、何がかかるか
AIの中身を手元に置ける、ということと、それを安く動かせる、ということは別問題です。
自社の中で動かすには、AI用の高性能な計算機、それを置く場所、冷やす設備、そして電気代がかかります。加えて、止まったときに直せる人も必要です。ひとり情シスや、IT担当が兼務という会社では、ここが一番の壁になります。
軽くした版も同時に公開される予定だと報じられています。軽くすると小さな機械にも載せやすくなりますが、その代わり答えの精度が落ちる業務がないかを、別に確かめる必要があります。
私の見立てでは、多くの中小企業にとって現実的なのは「自社のサーバー室に置く」ことではありません。信頼できる国内の事業者に、御社専用の環境で動かしてもらう形のほうが、費用も手間も見合うはずです。
御社なら、まず「外に出せない情報」を部署ごとに聞いて回る
大企業は国単位、グループ単位で「データを外に出さない」仕組みを作ります。御社でやるべきなのは、その社内版です。
私なら最初に、営業、経理、製造、総務と、部署ごとに担当者へ「AIに読ませたいけれど、外に出すのが怖い資料は何ですか」と聞いて回ります。会議で一度に聞くより、一人ずつ聞いたほうが本音が出ます。
すると、「顧客名簿は怖いが、作業手順書は出しても困らない」といった具合に、部署ごとの温度差が見えてきます。外に出しても困らない情報は、いま使っている一般的なAIで十分です。社内に置くタイプのAIが必要なのは、残った「本当に出せない情報」の部分だけかもしれません。
社長が決めるべきこと、任せていいこと

まず社長が決めるのは「何を外に出さないか」
どのAIを選ぶかは、担当者や取引先に任せて構いません。ですが、「この情報は社外に出さない」という線引きだけは、社長が決めてください。
ここを現場に任せると、慎重な人は何も使わず、気にしない人は何でも入れてしまいます。線を引く権限がある人が決めない限り、社内の使い方はそろいません。
取引先との契約で守秘義務がかかっている情報、個人情報、自社の技術の核になる情報。この3つに当てはまるかどうかで、社長が最終判断をする。私なら、まずそこから始めます。
次に決めるのは「記録を誰が見て、誰が止めるか」
社内に置けるAIの利点は、何を聞いて何が返ってきたかという記録を、自社に残せることです。ただし、それは記録を見る人がいて初めて意味を持ちます。
誰が記録を管理するのか。AIが出した答えを、どこまで業務の書類に使ってよいのか。おかしな答えが出たときに、誰が使用を止めるのか。この3つが決まっていないまま社内にAIを置くと、外のサービスを使うよりも、かえって後から追いかけにくくなります。
止める担当は、ITに詳しい人である必要はありません。その業務のことを一番わかっている人が適任です。
比べる作業は、担当者と取引先に任せていい
どのAIの点数が高いか、どの機械なら何件さばけるか。こうした比較は、社長が自分で調べなくて大丈夫です。担当者や、付き合いのあるIT会社に任せてください。
その代わり、社長は「何の業務で試すのか」と「どこまでできれば合格か」を先に伝えてください。たとえば「過去3年分の見積書を読ませて、似た案件の価格を5分以内に出せれば合格」といった形です。合格の基準があれば、担当者は迷わずに比較できますし、社長も報告を聞いて判断しやすくなります。
私なら、御社でこう使います

今月は「待つ」が正解
公開は10月中の予定です。公開直後は、試した人の報告や不具合の情報が少しずつ出てきます。私なら、公開から少なくとも数週間は様子を見ます。
その間にやっておくのは、ここまでお話しした「外に出さない情報の線引き」と「止める人の決定」です。これはAIの種類に関係なく、どのAIを使うにしても必要になる準備です。待っている時間を、準備の時間に変えておけば、公開後に慌てずに済みます。
公開後は、長い資料を読ませる業務ひとつで試す
試すなら、今回のAIの強みが出やすい業務を選びます。長い文章をまとめて読ませる仕事です。
たとえば、社内規程と過去の通達をまとめて読ませ、「この新しい取り組みは、今の規程のどこに引っかかるか」と相談する。あるいは、過去の提案書を読ませ、新しい案件の下書きのたたき台を一緒に考えてもらう。AIを答えを出す機械としてではなく、資料を読み込んだうえで一緒に考えてくれる相手として使う形です。
逆に、システムの修正や、画像を読ませる業務から始めるのは避けます。今回のAIが得意ではない分野で試すと、「やっぱりAIは使えない」という誤った結論になりかねません。
試した結果は、「答えの質が足りたか」「やり直しが何回必要だったか」の2点で振り返ります。計算が4分の1になっても、やり直しが2倍なら、費用も手間も減っていません。
取引先から聞かれたときの「説明できる材料」にする
もうひとつ、私が中小企業の社長に伝えたいのは、このAIを「使うかどうか」とは別の使い道です。
最近は、取引先の監査や契約更新の場で「生成AIをどう管理していますか」と聞かれる場面が増えています。そのとき、「外に出せない情報は社内に置けるAIで扱う選択肢も検討済みで、こういう線引きをしています」と説明できれば、それ自体が信頼につながります。
社内に置けるAIを選ぶ理由が、規制や取引先への説明であるなら、費用の安さよりも「どこから来たAIで、どうやって更新されるのか」を説明できることのほうが大切です。今回、米国発の選択肢が増えたことは、その説明の幅を広げてくれます。
今回のAIは、大きな頭を少ない計算で動かす競争の、まだ第一歩です。中国勢を追い越したとは、まだ言えません。勝ち負けは、公開後に第三者が確かめた結果と、実際に社内で動かしたときの費用で決まります。
いま言えるのは、外に出せない情報を持つ会社にとって、選択肢がひとつ増えた、というところまでです。
社長が今月やることは、AIを選ぶことではありません。御社の中で、何を外に出さず、誰が止めるのかを決めることです。そこが決まっていれば、どのAIが出てきても、落ち着いて選べます。
DXやITの課題解決をサポートします! 以下の無料相談フォームから、疑問や課題をお聞かせください。40万点以上のITツールから、貴社にピッタリの解決策を見つけ出します。
このブログが少しでも御社の改善につながれば幸いです。
もしお役に立ちそうでしたら下のボタンをクリックしていただけると、 とても嬉しく今後の活力源となります。 今後とも応援よろしくお願いいたします!
IT・通信業ランキング![]() | にほんブログ村 |
もしよろしければ、メルマガ登録していただければ幸いです。
【メルマガ登録特典】AI戦略で10年以上勝ち続ける実践バイブル『AI競争勝者の法則』をプレゼント!
今すぐプレゼントを受け取る