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大分市の生成AI導入に学ぶ、中小企業が社内の資料をAIに活かす始め方

Home > AI > 大分市の生成AI導入に学ぶ、中小企業が社内の資料をAIに活かす始め方

2026年9月29日 by akalink

「AIを入れてみたけれど、社員があまり使っていない」。ご相談の場で、社長からよく聞く言葉です。

原因の多くは、AIの性能ではありません。AIが「御社のこと」を何も知らないまま答えているからです。一般論しか返ってこないAIは、忙しい現場ではすぐに使われなくなります。

2026年10月1日、大分市が国の生成AI「源内(げんない)」をもとにしたサービスを、市の業務で使い始めます。自治体の話ですが、私はこのニュースを中小企業の社長にこそ知ってほしいと考えています。「AIに何を見せるか」「どこで使うか」「誰が確かめるか」という、会社の規模に関係なく通用する順番が示されているからです。

この記事では、大分市の取り組みを私ならどう読み解くか、そして御社ならどう使うかを順番にお話しします。

簡単に説明する動画を作成しました!

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目次

  • 大分市は何を始めたのか まず事実だけ押さえます
    • 国が公開したAIを、市の閉じた回線に載せた
    • 「市の資料を調べてから答える」仕組みが中心
    • 私はこのニュースをこう読みます
  • 社長が最初に決めるべきは「AIに見せる自社の資料」です
    • 一般論しか返ってこないAIは、現場で使われなくなる
    • 私ならこの三種類から預けます
    • 古い資料をそのまま入れると、AIは古い答えを出す
  • 「どこで使うか」は、自治体の真似をしなくていい
    • 大分市が専用回線にこだわった理由
    • 御社なら、専用回線ではなく「契約と設定」で守る
    • 一から作らず、あるものを借りる
  • AIに任せる前に、社長が決めておく「確かめる人」と「止める人」
    • AIの答えは下書き、最後の責任は会社に残る
    • 私なら、この役割を先に決めます
    • 最初の一カ月は、一つの仕事だけで試す
  • 御社の答えは、御社の資料から出す
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大分市は何を始めたのか まず事実だけ押さえます

大分市は何を始めたのか まず事実だけ押さえます

国が公開したAIを、市の閉じた回線に載せた

源内は、デジタル庁が国の職員向けに作った生成AIの仕組みです。2026年4月、誰でも無料で使える形で中身が公開されました。

大分市はこれをもとに、市の業務向けのサービス「Oita GENAI(おおいた げんない)」を用意しました。8月に事業者を募集して選び、約2カ月で使い始める段取りです。データは国内のデータセンターに置き、自治体どうしをつなぐ、外のインターネットから切り離された専用回線(LGWAN)の中で使います。自治体が源内をもとにしたサービスをこの専用回線で使うのは、今回が初めてです。

「市の資料を調べてから答える」仕組みが中心

このサービスの中心は、市が持っている資料をAIに預けておき、質問が来たらまずその資料を探してから答える仕組みです。預けるのは、市の決まり事(条例や規則)、事務の取り扱い基準、過去の議会での答弁、庁内のマニュアルなどです。

使い道は、文書の下書き、議会答弁の案づくり、問い合わせへの回答、会議の文字起こし、翻訳などです。機能は多いですが、大事なのは「答えの根拠を市の資料から取る」という一点です。

私はこのニュースをこう読みます

私がこのニュースで注目するのは、「生成AIを入れた」ことではありません。「外に出せない資料を扱える場所で動かす」「自分たちの資料を見せる」「一から作らない」という三つが、同時に揃ったことです。

この三つは、社員10人の会社でも、100人の会社でもそのまま当てはまります。ただし、真似すべきなのは形ではなく順番です。専用回線を引く必要はありません。ここから先は、御社に置き換えてお話しします。

社長が最初に決めるべきは「AIに見せる自社の資料」です

社長が最初に決めるべきは「AIに見せる自社の資料」です

一般論しか返ってこないAIは、現場で使われなくなる

市の職員が知りたいのは、上手な一般論ではなく「本市の基準ではどう書いてあるか」「前回の似た質問にどう答えたか」です。

御社の社員も同じはずです。「うちの返品ルールではどうなっているか」「この取引先には前回いくらで見積もったか」。こうした質問に、御社の資料を知らないAIは答えられません。結局、社員は自分でファイルを探しに戻ります。AIが使われない理由の多くは、ここにあります。

私ならこの三種類から預けます

大分市は、預ける資料を決まり事、基準、過去の答弁、マニュアルに絞りました。これを中小企業に置き換えるなら、私は次の三種類から始めます。

一つ目は、社内の決まり事です。就業規則、経費精算のルール、値引きや返品の基準などです。二つ目は、過去のやり取りです。よくある問い合わせとその回答、見積もりの考え方などです。三つ目は、仕事の手順です。新人向けの作業手順や、機械の点検手順などです。

最初から全部を入れようとしないでください。社員が普段いちばんよく聞いてくる質問は何か。そこから逆算して、その答えが書いてある資料から預けるのが近道です。

古い資料をそのまま入れると、AIは古い答えを出す

AIは、預けた資料が正しいという前提で答えます。何年も前の手順書や、実はもう使っていない値引き基準を預ければ、AIはそれを自信ありげに答えます。いちばん困るのは、担当者の頭の中にしかないルールです。資料になっていないものは、AIには見えません。

ですから、資料を預ける前に、担当者に「これは今も正しいか」を確かめてもらいます。私の経験では、ここで社内の決まり事の古さや食い違いが見つかることがよくあります。AIを入れる準備が、そのまま社内のルールの見直しになる。私はこれを、AI導入のいちばん大きな副産物だと考えています。

「どこで使うか」は、自治体の真似をしなくていい

「どこで使うか」は、自治体の真似をしなくていい

大分市が専用回線にこだわった理由

大分市が外から切り離された回線を選んだのは、外に出せない資料をAIに見せるためです。一般的なAIはインターネットにつながっていることが前提なので、条例の全文や公開前の答弁メモを扱うには向きません。

根拠となる資料がある場所と、AIが動く場所が別々だと、職員は結局自分で資料を探すことになります。だから市は、資料のある側にAIを近づけました。

御社なら、専用回線ではなく「契約と設定」で守る

中小企業が、自前のサーバーや専用回線を持つ必要はありません。私なら、法人向けの契約で、入力した内容をAIの学習に使わない条件のサービスを選びます。そして、資料を預ける範囲を社内に限る設定にします。

同時にやっておきたいのが、今の実態を知ることです。社長が気づいていないだけで、社員が個人の無料版のAIに、お客様の名前や見積もりの数字を貼り付けていることは珍しくありません。私なら、まず次の会議で「今、誰が、どのAIを、何に使っているか」を率直に聞きます。禁止するだけでは、使う人は隠れて使います。会社として安全に使える場所を用意するほうが、結果的に情報を守れます。

一から作らず、あるものを借りる

大分市も、AIの仕組みを一から開発したわけではありません。国が公開したものと、事業者がすでに自治体向けに動かしていた基盤を組み合わせたから、約2カ月で使い始められました。

御社も「自社専用のAIを開発しよう」から入らないでください。今ある法人向けサービスの中から、資料を預けて使える機能を選んで試すほうが確実です。開発に使うはずだった予算と時間は、先ほどお話しした資料の整理に回してください。AIがどれだけ役に立つかは、仕組みよりも預ける資料の質で決まります。

AIに任せる前に、社長が決めておく「確かめる人」と「止める人」

AIに任せる前に、社長が決めておく「確かめる人」と「止める人」

AIの答えは下書き、最後の責任は会社に残る

大分市でも、答弁の最終的な責任は担当の課と決裁する人に残ります。AIが市の資料を見て答えたことと、その資料が今も正しいことは別の話だからです。

御社でも同じです。AIが作った見積もりの案や、お客様への回答文がそのまま外に出れば、責任を負うのは会社です。ですから私は、AIを「答えを出してくれる機械」ではなく、「一緒に考えてくれる相手」として位置づけることをおすすめしています。AIが出すのはあくまで下書きです。どこまでを下書き扱いにし、どこから人が確かめるのか。この線引きは社長が決めてください。

私なら、この役割を先に決めます

使い始める前に、役割を三つ決めます。一つ目は、預けた資料を最新に保つ人。二つ目は、AIの答えを元の資料と照らし合わせて確かめる人。三つ目は、おかしな答えが続いたときに、いったん使うのを止めると判断できる人です。

社員10人ほどの会社なら、資料の担当と確認の担当は現場をよく知る一人、止める判断は社長、という分け方で十分です。大事なのは、この三つが決まらないまま使い始めないことです。決まっていないと、誰も資料を直さず、誰も確かめず、問題が起きたときに誰も止められません。

最初の一カ月は、一つの仕事だけで試す

私なら、最初の一カ月は対象を一つの仕事に絞ります。たとえば「お客様からのよくある問い合わせへの回答案づくり」です。成果が見えやすく、確かめる人も決めやすいからです。

一カ月たったら、実際に使った社員に「探す時間は減ったか」「確かめる手間は増えたか」を聞いてください。数字がなくても構いません。現場の手応えを聞いたうえで、次に預ける資料と、次に広げる仕事を決めます。少しずつ広げるほうが、社員も安心して使い続けられます。

御社の答えは、御社の資料から出す

御社の答えは、御社の資料から出す

大分市のニュースは、「国のAIが自治体で使われ始めた」という話に見えます。でも私には、「自分たちの資料を見せ、安全な場所で使い、人が確かめる」という、ごく当たり前の順番の話に見えます。

その順番は、中小企業でも変わりません。むしろ、社長の判断ですぐに動ける中小企業のほうが、この順番を早く回せます。社員が毎日聞いてくる質問、その答えが書いてある資料、それを確かめる人。この三つが揃えば、AIは御社のことを知った相談相手になります。

「どの資料から預ければいいか分からない」「社員がどんなAIを使っているのか把握できていない」。そう感じた社長は、一度ご相談ください。御社の業務と資料を一緒に見ながら、どこから始めるのがいちばん無理がないかを具体的にご提案します。

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執筆者 相馬 正伸

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